2005年頃から使われるようになった“ブラック企業”という言葉ですが、実は言葉の定義は存在しません。
しかし、近年ではブラック企業によって過労死に陥ったり、うつ病になったりする人も多く、社会問題として取り沙汰されることも多くなりました。またブラック企業問題は日本特有の問題で、「KAROSHI」と英語でもそのまま通じるほど、過労死は日本国内で頻繁に起こっています。

今回は、残業とブラック企業の関係について、二人の会話を参考に考えていきたいと思います。


ヒナヒナ

今回は、ブラック企業経験者で数々の苦しい経験をされてきたハジメ先輩に、残業とブラック企業についてお話を聞いてきました!

私と同じように、毎日遅くまで働いている方や、ブラック企業に苦しんでいる方は必見ですよ!

ハジメハジメ

自分の経験が少しでも、皆さんの役に立てばいいなって思っているので、よろしくね!

一般的な残業時間の考え方

ハジメハジメ

ヒナちゃんはそもそも残業っていうのがどういうものか知ってる?

ヒナヒナ

残業ってことは、決められた時間より長い時間働くことですよね?

ハジメハジメ

その答えだと半分正解で、半分間違いかな。まずは残業について詳しく見ていこう。

残業とは法定労働時間を超えた労働のことで、会社で決められた所定労働時間を超えて働くことではありません。

法定労働時間と所定労働時間

残業を考えるには法定労働時間と、所定労働時間の違いについて知っておく必要があります。

法定労働時間は一日8時間、週に40時間というように法律(労働基準法第32条)で定められた労働時間の上限のことです。

所定労働時間は、会社で決められている労働時間で、会社によっては1日7時間や4時間など様々です。

この2つの労働時間の内、法定労働時間を超えた分が残業となり給与の1.25倍を支払うことが義務付けられています。

ヒナヒナ

つまり、1日8時間以上働いたら、その超えた分が残業ということですね?

ハジメハジメ

そうだね。定時を超えたらではなく、8時間以上働いたらそれ以上は全て残業になるんだ。

例えば定時が9時から17時までで休憩が間に1時間ある場合だと、労働時間は1日7時間。その場合、18時まで残って働いても、それは残業に含まれません。この場合は18時以降からの労働時間が残業に含まれることになります。

ブラック企業とホワイト企業の残業時間

ハジメハジメ

残業についてわかったところで、ヒナちゃんの一ヶ月の残業時間はどれくらいなの?

ヒナヒナ

だいたい毎日9時から21時まで働いて、月に23日出勤だから・・・一ヶ月に70時間くらいですね。

ハジメハジメ

それだと過労死ラインに近いし、かなり大変じゃない?日本の平均残業時間は一ヶ月で約10時間なんだよ。

残業の過労死ライン

過労死ラインは厚生労働省が、労働災害が起こった際に、過労死と認定される基準とされる目安で、一ヶ月で100時間。2~6ヶ月連続して80時間と決められています。

ヒナちゃんは一ヶ月70時間の残業をしており、過労死ラインである80時間にかなり近い時間働かされていることがわかります。また、日本の平均残業時間は、厚生労働省の統計労働調査によれば10.2時間と言われており、平均と比べてかなり長い残業をしていることがわかります。

また、厚生労働省が示している残業の上限は一ヶ月で45時間、年間で360時間と定められています。(36協定)これ以上の残業をしている会社はブラック企業の可能性が高いと言えるでしょう。
36協定の抜け穴として、特別条項というものがあります。臨時的な場合には残業の限度時間の上限を超えることが可能になります。これを悪用する企業も増えてきているようです。

つまり、
ホワイト企業:残業が45時間以内。
ブラック企業:残業が45時間を超える違法労働。
と考えてもらえるとわかりやすいです。

ヒナヒナ

ということは、私の会社は残業が45時間を超えているから、ブラック企業の可能性が高いということですね。

ハジメハジメ


そうなるね。昨年、話題になった大手広告代理店の過労死問題では、毎月100時間を超える残業があったみたいだし、ヒナちゃんもこれ以上、残業が増えるようだと本当に危険だよ。

ブラック企業とホワイト企業の残業代

残業時間から判断するブラック企業の目安として45時間と言うことがわかりましたが、残業代についても注意が必要です。

ハジメハジメ

ヒナさんはちゃんと残業代払ってもらっているかな?45時間を超える残業が違法な場合、それ以上の残業代を払わない会社が多いんだ。

ヒナヒナ

確かに私の会社は、どれだけ残業しても1日1時間分のみなし残業代しか払われていませんね。

みなし残業とは

みなし残業は、毎日ここまでは残業することになるという目安のようなもので、働いても働かなくても給料に含まれている残業代のこと。
みなし残業があるからといって、みなし残業を超える残業代を支払わない会社が多いが、みなし残業を超えた場合は、超えた分を支払ってもらう必要があります。

45時間を超える残業は存在しない!?

毎月の残業時間の上限が45時間に決まっているので、それ以上の残業代を支払えば違法残業をさせていたことを認めることになるので、会社が支払ってくれる上限は45時間分の残業と思っておいたほうがいいかもしれません。
しかし、給料を全額支払わないことも違法なので、払っても払わなくても違法。つまり、ブラック企業ということです。

ホワイト企業:残業代を全額支払っても問題ないので、支払ってくれる。
ブラック企業:全額支払うと違法残業がばれるので、みなし残業などを利用して正しく支払いをしてくれない。

ヒナヒナ

私の会社は、残業時間も上限を超えているし、残業代も全額払ってくれていないので、真っ黒なブラック企業なんですね。

ハジメハジメ

そうだね。みなし残業が含まれていても、それ以上の残業をした場合は、ちゃんと給料を貰っていいんだよ。

サービス残業は違法?

日本にはサービス残業という言葉がありますが、そもそもサービス残業自体が違法です。

ハジメハジメ

ヒナさんは毎日1時間のみなし残業があると言っていたから、残りの2時間分はサービス残業をしていたことになるね。

サービス残業は、本来であれば発生している残業代を貰わずに残業をすることです。この場合、本来であれば支払われるべき賃金が支払われていないことになり、“給与の不払い”に該当します。
これは労働基準法第24条の全額払いの原則に違反していることになります。

日本は先進国でも特にサービス残業が多いと言われていて、約6割の人がサービス残業をしていると言われています。

サービス残業の主な原因は、

  • 労働者側の労働基準法に対する知識不足。
  • 雇用主側のコストカット。

と言われています。

雇用主側のコストカットとしてサービス残業が存在することを防ぐことは難しいかもしれませんが、労働者側の知識不足というのは個人で学ぶことで防ぐことができます。なので、社会で働くならある程度の労働基準法についての知識を身に着けておくべきです。

また、サービス残業などで、未払いの賃金が存在する場合は、未払い賃金の請求が可能です。ただ、未払い賃金請求は2年間分しかさかのぼって請求することができないので、サービス残業などで未払い賃金がある場合は、早めに請求するようにしましょう。

業種別の残業時間

ヒナヒナ

残業も多くて、残業代もちゃんと払ってくれない会社だったら、私って転職したほうがいいのかな?

ハジメハジメ

転職しても、そこがホワイト企業かわからないし難しいよ。でも、業種を選ぶことで残業時間を減らすことはできるかもしれないよ。

Vorkersという会社が調査してくれた業種別残業時間を見てみよう
残業が多い業種
出典元:約6万8000件の社員クチコミから分析した‘残業時間’に関するレポート

このランキングを見ると、業種ごとのだいたいの残業時間の実態を知ることができるので、転職時に残業が短い企業に就職したい場合には参考にするといいでしょう。

ランキングTOP30は全て残業時間が45時間を越えており、日本の労働環境が違法状態であることがよくわかります。また上位10位の中でも、マスコミ・サービス・不動産関連が上位に多く含まれていることがわかります。これらの現状をわかった上で、転職をすることで少しでも残業のない企業に就職できるかもしれません。

ただ、業種によって完全に残業時間が決まっているわけではないので、業種全体として残業時間が短くても、就職した会社が運悪く長時間残業を強いる会社の可能性はあります。
また、今回参考にさせてもらったVorkersというサイトは、実際に働いた社員からの口コミ情報300万件を取り扱っている転職サイトで、実情と異なる求人情報に騙されないためにも、参考にすることをおすすめします。

残業とブラック企業に関するまとめ

ヒナヒナ

ハジメ先輩、今日はありがとうございました。おかげで残業とブラック企業の関係がよくわかりました。自分の働いている会社が違法労働をしているのは信じたくは無いですが、これが現実なんですね。

ハジメハジメ

確かにせっかく働き始めた自分の会社がブラック企業って言うのは信じたくないよね。でも、過酷な労働環境で我慢して働くことが正解とは限らないし、残業時間の上限を超えてまで働かされていることは事実だから、少しでも次の道を考えるきっかけになればよかったかなって思うよ。

とある調査では、自分が勤めている会社がブラック企業だと思うか?という問いに対して、24.5%の人が「ブラック企業だと思う」と回答しています。
4人に1人がブラック企業に勤めている社会は異常ですが、ブラック企業で働いている人がいる限り、ブラック企業はなくなりません。

自分の会社がブラック企業かどうかを判断する上で、残業時間や残業代をひとつの基準にして考えてみるのもいいかもしれません。

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